公共工事の入札に参加する方法!手続きの流れを解説

公共工事の入札に参加したいけど、手続きが難しそう、何から手を付ければ良いかわからない、という相談を、当事務所でも非常によく受けます。本記事を読めば、公共工事の入札に参加したことがない建設業者様でも、参加手続きから入札、落札までの流れと、必要な手続きを全て理解することができます!

目次

公共工事の入札とは?

まず、公共工事とはどのような工事のことを指すのでしょうか?公共工事とは、国や都道府県、市区町村などの地方自治体、特殊法人などが発注する建設工事のことを指し、例えば道路やトンネル、また役所や学校などの公共施設に関する工事などが該当します。

公共工事は、税金を財源とする公共事業であるため、最も価値の高い(低コスト高品質な)調達方法が求められます。そのため、多くの候補者を募って入札を行い、最も優れた(安価な)提案をした候補者を落札者として、契約を締結する方式が取られます。これが公共工事の入札の仕組みになります。

※除雪や除草は公共工事に含まれず、「役務」という入札の種類となります。役務について詳しく知りたい方は「物品・役務の入札に参加する方法!」を参照ください

入札の種類

入札と一言にいっても、その方式によっていくつかの種類に分けられます。入札案件の内容を確認する際に、この入札の種類を理解していなければ、自社が参加できる案件か判断ができませんので、しっかりとその意味を理解しておくようにしましょう。

一般競争入札

入札情報を公告したうえで、不特定多数の参加申込を募り、その中で最も有利(安価)な条件を提示した入札者と契約する方式。原則、入札参加資格を保有している全事業者が参加可能な方式となる。

制限(条件)付き一般競争入札

原則的には、一般競争入札の方式を取りつつも、参加資格に一定の要件を設けて行われる。地元業者(営業所を発注自治体内に設置している事業者)に限定したり、経営事項審査の点数で制限するケースが多い。現状、入札案件の多くは、この制限付き一般競争入札として公募されるケースが多い。

指名競争入札

発注機関が、入札参加者を指名し、指名された事業者の中で入札が行われる方式。入札参加資格を保有していても、発注機関から指名がかからなければ参加できない。近年は減少傾向にあるが、地方の自治体などではいまだ主流なケースもある。

随意契約

何らかの事情により、競争入札をせずに、発注機関が任意の事業者と契約をする方式。原則公共事業は入札を行うことになっており、随意契約を行える条件は法令で定められており、特殊な技能を要する場合や、災害対応等の場合に限定される。

公共工事の入札に参加する為の手続き

公共工事の入札に参加する為には、前もって取得が必要な許認可や、法令で定められている手続きを行う必要があります。それらを全て完了させてはじめて入札に参加できるようになります。ここでは入札参加に必須の手続きについて説明していきます。

建設業許可の取得

最初に必要な手続きが、建設業許可の取得です。建設業許可は、本来500万円以上の工事を請負う際に必要な許認可になりますが、入札に参加する場合は、受注する公共工事がどのような業種・金額であっても許可が必要になります。その理由として、この後説明します入札参加に必須な手続きである「経営事項審査」と「入札参加資格の取得」において、建設業許可が必須となる為です。

その為、許可を持っていない事業者は、まずは建設業許可の取得から始める必要があります(建設業許可の取得には、最速でも1~2ヶ月程度日数がかかります)。

経営事項審査の受審

許可の取得が完了すれば、次は「経営事項審査」という手続きを受審する必要があります。経営事項審査は通称「経審」と呼ばれる手続きで、公共工事を請け負う事業者が必ず受審しなければいけない、法令で定められている手続きになります

経営事項審査は、会社の規模や財務状況、売上実績、技術力などを決められた計算式により点数化する手続きで、建設会社の通知表のようなものです。参加できる公共工事の規模が、この経営事項審査の点数によって決まる自治体も多く、入札において非常に重要な手続きとなります。

経営事項審査は、許可を受けた都道府県または地方整備局に対して行い、申請から1ヶ月程度で審査結果(点数)が会社に書面で通知されます。一度受審すればずっと有効というわけではなく、公共工事に参加したい場合は、毎年決算終了後に受審をする必要があります

※経営事項審査と入札の関係性について詳しく知りたい方は「入札成功のカギは経営事項審査?公共工事と経審の関係性を解説」を参照ください

入札参加資格の取得

経営事項審査を受審し、審査結果(点数)が出れば、次に公共工事の入札に参加したい発注機関に対して、入札参加資格の申請を行います(指名願いとも呼ばれる)。入札参加資格は発注機関毎に取得する必要があり、例えば、東京都と神奈川県が発注する公共工事に参加したい場合は、東京都と神奈川県の入札参加資格申請を行い、それぞれの資格を取得する必要があります。全国に営業所を展開し、全国の自治体の公共工事に参加するような場合は、100以上の自治体の入札参加資格を取得しているようなケースもあります。

この参加資格の申請受付時期は、発注機関によって個別に設けられており、1年を通し常に受付けてもらえる発注機関もありますが、1年や2年に1度決まった時期にしか申請を受け付けていない発注機関もあります。その為、公共工事に参加したい発注機関がある場合は、事前に申請受付時期を確認しておく必要があります。 入札参加資格の取得にかかる日数ですが、参加資格申請をしてから、おおよそ1~2か月程度の審査期間を経て、審査で問題が無ければ参加資格取得となる(発注機関の入札参加資格者名簿に載る)ケースが多いです。

※入札参加資格について詳しく知りたい方は「入札参加資格とは?」の記事を参照ください

公共工事の入札から案件受注までの流れ

以上の必要な参加手続きが全て完了し、発注機関の参加資格を得ることで、ようやく入札のスタートラインに立つことができます。公共工事の入札はここからが本番になりますので、入札手続きから案件受注までの流れを詳しくご紹介していきます。

STEP
入札案件を探す

入札案件は、発注機関のホームページや、独自の電子入札システムなどで公開されており、一般競争入札であれば誰でも閲覧が可能です。また近年は減少傾向にありますが、役所の掲示板などで開示されるケースもあります。 工事の詳細は、公告という形で公開されますので、公告の中身を確認し、自社が参加できそうな案件か、工事の概要や参加条件、入札方式から確認し、入札に参加するかを検討します。

STEP
設計図書を入手する

参加する工事の案件が決まれば、見積もりに必要な工事の図面や仕様書などのいわゆる「設計図書」を入手します。設計図書の入手方法は発注機関により様々で、ホームページや独自の入札システムからダウンロードする方法や、発注機関に個別で問い合わせをして入手する方法などがあります。設計図書を問い合わせるタイミングで、入札参加資格の確認を発注機関が行うケースもあります。

STEP
入札

設計図書を基に積算を行い、最終的な入札価格(見積もり)を決定します。価格が決まれば、入札を行うのですが、入札方法も発注機関や案件により様々です。最近は多くの発注機関で電子入札が行われていますが、紙入札のところもまだまだあります。入札期間は1日や長くても数日の場合が多く、予定の管理が必須です。1分でも受付時間を過ぎると入札を受け付けてもらえないので注意しましょう。

STEP
落札者の決定

入札の受付が締め切られると、多くの場合は即日や翌日には入札結果が公表され、落札者が決定します。競争入札であれば、最低入札価格を下回らなかった候補者の中で、最も安価な価格の候補者から優先的に落札者となります。

STEP
契約

落札者に決定した事業者は、発注機関と契約を締結します。何らかの理由で第一候補者と契約を締結しなかった場合は、次に入札価格が低かった第二候補者と契約を行う事になります。

公共工事の入札参加にかかるコスト

公共工事の入札に参加する場合、初めての参加であれば、時間的なコストと金銭的なコストの両方がかかってきます。それらを考慮したうえで、公共工事に参加するかどうかを検討する必要があります。

時間的なコストが発生する

ここまでご説明した手続きを、全て自社でやろうとした場合、かなりの時間的コストがかかることを考慮する必要があります。建設業許可の取得から行う必要がある場合は、余裕を見ても、半年から1年をかけて準備するようなイメージを持ちましょう。

まず、建設業許可の申請は、初めての場合、申請書類を作るだけでもかなり骨が折れます。また更にそこから経営事項審査の受審となると、手続きにかかる業務負担はかなりのものになります。参考までに東京都のそれぞれの申請の手引きのページ数は、建設業許可で全110P、経営事項審査で全116Pとなっています。これらを丁寧に読み込み、申請書類を作成したり、役所を回って必要な書類を入手するだけでもかなりの作業量になります。

また、入札参加資格の申請も、発注機関のごとに申請方法が異なる為、複数の発注機関の資格を取得したい場合は、それだけ業務が複雑かつ多量になります。手続きが途中で頓挫してしまわないように、自社で参加手続きを行えるマンパワーがあるかどうかを確認してから、手続きを進めることをオススメします

専門家に代行してもらう事も可能

建設業許可や経営事項審査、入札参加資格申請の手続きは、行政書士に代行してもらう事が可能です。これらの手続きを外注するだけでも、自社の作業量は大幅に削減できます。しかし、その分、金銭的なコストが発生します。

建設業許可の申請は、申請先の自治体に支払う申請手数料で9~15万円の費用がかかりますが、行政書士に申請を依頼すれば、そこにプラスして相場的には15~25万円程度の代行報酬がかかります。また、経営事項審査は、分析機関に支払う分析費用や、申請先の自治体へ支払う手続き費用で、2~5万円程度費用が発生しますが、こちらも行政書士に手続きを依頼すれば、それにプラスして相場的には15~25万円程度の代行報酬がかかります。入札参加資格申請の代行も行政書士に依頼できますが、こちらも相場でいえば3~5万円/1自治体の代行報酬がかかります。

申請手数料代行報酬(相場)
建設業許可9~15万円15~25万円
経営事項審査2~5万円15~25万円
入札参加資格申請手数料不要3~5万円/1自治体

これらの時間的、金銭的なコストが発生することを考慮したうえで、公共工事への参加をすべきかどうかを、判断する事が必要になります。

公共工事を受注するメリット

公共工事の入札に参加し、元請けとして公共工事を受注するメリットは数多くあげられますが、民間工事と比較しても特に特徴的なメリットは以下の4つがあげられます。

①売上・利益率の向上が見込める

公共工事を落札することで、元請として工事を施工することになります。多重下請構造の工事の現場においては、当然、元請業者の売上単価が一番高くなります。また、基本的には利益率も元請が良いとされています。また、経営事項審査においても、元請完成工事高は下請完成工事高より高く評価されますので、成績が伸びることでより大きな公共工事にも参加できるようになるという、好循環も生まれやすくなります。

②景気に関わらず安定して案件がある

公共工事は、民間工事と比べると、景気の影響を受けづらく、安定して案件がある点が魅力のひとつです。公共工事を受注できる体制を整えておくことで、世の中の不況の影響などを受けづらく経営が安定しやすくなります。

③未払いが無く資金繰りも改善する

公共工事の請負金額は、税収から支払われる為、未払いのリスクがありません。また、民間の下請工事のように、元請が倒産し工事代金が未払いとなるリスクもありません。また、公共工事には前受金制度があり、着工時に請負金額の一部が前払いされるケースが多いです。その為、建設業者の課題となりやすい資金繰りも、改善する傾向にあります。

④会社としての信用力があがる

公共工事の受注実績は、国や地方自治体から、工事の技術力と会社としての信用力を認められた証といえます。その為、対外的な会社の信用力があがり、求人活動でのアピールポイントになったり、銀行での融資調達などに有利にはたらくなどのメリットがあります

最後に…公共工事の入札で勝つために重要な事

入札に勝ち、公共工事を受注する為に必要なことは、「ゴールを決めて、逆算して戦略を立てる」という考え方です。とりあえず入札に参加してみたけど、まったく受注できなかったということは、公共工事の入札では本当によくあります。そうならない為には、「どこの発注機関で、いつ頃発注がされている、どのような業種と規模の工事を受注する」という具体的なゴールを決めて、そこから逆算して手続きを進めていくことが何よりも大切なことになります。

入札は情報戦ですので、まずはより多くの発注機関の情報をあつめて、自社が入っていけるような案件が募集されている発注機関を探しましょう。規模が小さくても競争率が低い案件などを最初のゴールに据えるのも、有効な戦略となります。入札の成功は、参加手続きを始める前から決まっているといっても過言ではありません。入念な事前調査と準備を行うようにしましょう。

まとめ

以上、ここまで、公共工事の入札に参加する方法についてご紹介してきました。公共工事の参加には、必要な手続きが多く、非常に手間がかかりますが、言い換えるとそれだけ参入障壁が高いという事にもなります。公共工事を受注できる体制を作っておくことは、経営の安定にも繋がりますので、入札参加をお考えの事業者様は、本記事を参考に是非一度入札に挑戦されてみてはいかがでしょうか。

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