入札成功のカギは経営事項審査?公共工事と経審の関係性を解説

皆さんは経営事項審査についてどのようなイメージをお持ちでしょうか?「公共工事に参加するために受けないといけない手続き」、「受けていないと入札に参加できない」等、少しネガティブな印象をお持ちかもしれません。しかし経審は、入札成功のカギともいえる非常に重要で奥の深い手続きです。本記事では、経営事項審査と公共工事入札の関係性について、わかりやすく解説していきます。

目次

経営事項審査とは?

経営事項審査とは、建設業法という法律により規定されている、公共工事を請け負う事業者が、必ず受けなければいけない審査手続きで、一般的に「経審」の略称で呼ばれます。審査の対象は、事業者の売上高から企業規模や財務状況、施工能力、社会貢献度まで総合的に評価され、それらが点数化(数値化)されます。

経審で評価された点数には有効期限があり、審査基準日(審査受審者の決算日)から1年7カ月となっています。その為、常に経審の有効な点数を保有し続ける為には、毎年、決算を迎えてから4カ月以内に、継続して経審を受審しなければいけません

入札と経営事項審査の関係性

それでは、この経審は、公共工事の入札とどのような関係性があるのでしょうか。「入札に参加するために、ただ受けておかなければいけないだけの手続き」という認識で経審を考えていると、入札がうまくいかない原因になりえます。入札戦略によっては、この経審が入札手続き上、最も重要な位置づけとなるケースもあるのです。ここでは、特に知っておかなければいけない、入札と経審の関係性について3つご紹介します。

入札参加資格の取得は経審の受審が必須

入札に参加する為には、発注機関(国や地方自治体)の入札参加資格を取得する必要がありますが、ほぼ全ての発注機関で、工事の参加資格に「経審を受審していること」を条件としています。つまり、入札に参加する為には、必然的に経審を受審し、有効な点数を保持している必要があるのです。

※入札参加資格について詳しく知りたい方は「入札参加資格とは?」を参照ください

この時に注意が必要なのが、経審を受審して結果が出るまでには1~2カ月の日数がかかる点です。初めて入札に参加する場合は、参加したい入札案件から逆算して、手続きのスケジュールを把握し、希望する案件に間に合うように計画的に手続きを進める必要があります。

受注できる工事の規模が経審の点数で決まる

入札と経審の関係性で最も重要なポイントは、経審の点数で、受注できる工事の規模が決まってくるという点です。そのような事がおきる理由は、入札制度に関する以下の2つの事情があげられます。

①入札参加資格の等級が経審で決まる

入札参加資格を取得する際に、多くの自治体では、参加資格者に対して「等級」というランク分けを行い、そのランクに応じて、受注できる工事の規模を制限しています(「等級」は自治体により「格付け)や「ランク分け)などとも呼ばれます)。

例えば、東京都発注の土木工事の場合、経審の点数等により4つの等級にわけられており、3億円以上の工事は、最上位の等級であるAランクの業者しか入札に参加できません。つまり、東京都発注の4億円の土木工事を受注したいと思い、入札参加資格を取得しても、経審がBランクやCランクの点数しかなければ、その時点で希望していた案件を受注できない事が決まってしまっているのです。

要注意!

多くの発注機関では、一度決まった等級は、次の経審の点数が出るまでや、参加資格の更新までは変わることがありません。つまり、希望している等級でなかった場合でも、最低1年間、長ければ2年から3年間その等級でしか入札には参加できないという事です。それだけ経審の点数は、入札において重要なものなのです。

②経審の点数が入札参加の条件になる工事がある

自治体や工事の種類によっては、等級によるランク分けがされないケースもあります。その場合は、経審の点数は重要ではないかというと、決してそうではありません。なぜかというと、特に規模の大きい工事においては、その工事の入札参加の条件に、経審の点数が設けられているケースが多いからです。

例えば、等級による参加工事の金額に制限がなかったとしても、案件ごとの参加資格に「この案件は、経審で800点以上の業者のみ参加可能」という条件が付いていた場合、800点未満の業者は入札に参加できないことになります。案件毎にこのような条件が付くか付かないかは、発注機関によっても異なりますので、入札参加を狙っている発注機関の案件を事前に調査し、傾向を掴んでおくことが重要です。

入札を取ると経審の点数が伸びる

公共工事の入札において、経審が重要であることは理解頂けたと思いますが、経審にとっても、公共工事の入札結果が非常に重要な意味を持ちます。なぜかというと、経審の点数は、元請工事の完成工事高が、下請工事の完成工事高より、点数に大きく影響するように設計されているからです。つまり、公共工事を元請として受注すれば、元請完成工事高が計上されるため、経審の点数が大きく伸びる要因になるのです。

つまり、公共工事を受注すれば、元請けとしての実績が増える⇒経審の点数が伸びる⇒さらに大きい工事が受注できるようになる⇒さらに経審の点数が伸びる、といった好循環を生み出すことが可能になるのです。公共工事をメインに取り組んでいる建設業者の多くは、この好循環を作ることに成功し、着実に元請け業者として会社を成長させています。

入札に勝つための経審との向き合い方

それでは、入札を成功させ、公共工事を受注する為には、経審とどのように向き合えばよいのでしょうか。最も重要なことは、具体的な目標(ゴール)に決めて、そこから逆算した経審戦略を立てることです。

例えば、〇〇市から例年〇月頃に発注がある、〇〇工事を受注する!と決めれば、その為に必要な経審の点数がいくつなのかが決まってきます。その点数に足りないのであれば、点数アップのために、短期的、長期的に取り組むべきことは何なのかが決まり、計画的な経審戦略を立てる事が可能になります。

なりゆきで何も考えず経審や入札参加資格申請をしていては、ふたを開けてみたら、自社が入れる工事が全然ない、という事にもなりえます。目指すゴールによっては、今年は経審の点数的にまだ早いから、2~3年かけて経審の点数を伸ばしてから参加する、という戦略が、会社にとって最適な答えという事もありえるのです。

※公共工事の入札に参加する方法について詳しく知りたい方は「公共工事の入札に参加する方法!」を参照ください

まとめ

以上、ここまで、経営事項審査と公共工事入札の関係性についてご紹介してきました。大切な考え方は、経審はゴールではなく、公共工事の受注がゴールだという考え方です。設定するゴールによって経審への向き合い方は変わってきます。ゴールまで最短最適に向かうためには、どのような経審結果が求められるかを逆算的に考え、戦略的に経審に取り組んでいくようにしましょう。

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