「全省庁統一資格を取りたいけど、どうすれば良いかわからない…」というご相談は、当事務所にもよく寄せられます。全省庁統一資格は、1度取得すれば、全国の各省庁の入札に参加できるようになる非常に便利な資格です。本記事では、全省庁統一資格の概要から、その取得方法まで、詳しく解説していきます。
全省庁統一資格とは?
全省庁統一資格とは、各省庁(財務省や文部科学省など)が発注する物品の製造や販売等の「入札」に参加できる資格のことです。“全”省庁統一資格の名前の通り、この資格を持っていれば、全ての省庁が発注する入札案件に参加することができます。
通常、入札参加資格は、発注機関毎に資格を取る必要があり、例えば、東京都発注の入札であれば、東京都の入札参加資格を取る必要があります。しかし、全省庁統一資格は、1つ持っていれば、あらゆる省庁が発注する入札案件に参加することができる、非常に便利な参加資格になっています。
関連記事:入札参加資格申請とは?資格の種類から概要まで徹底解説
対象となる省庁
全省庁統一資格の対象省庁は以下になります。全省庁統一資格を持っていることで、以下の省庁が発注する入札に参加できるようになります。
衆議院、参議院、国立国会図書館、最高裁判所、会計検査院、内閣官房、内閣法制局、人事院、内閣府本府、宮内庁、公正取引委員会、警察庁、個人情報保護委員会、カジノ管理委員会、金融庁、消費者庁、こども家庭庁、デジタル庁、復興庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、防衛省
※外局及び附属機関その他の機関並びに地方支分部局を含む
全省庁統一資格の特徴
全省庁統一資格を取得するうえで、必ず押さえておきたい主な特徴をご紹介します。
全国の発注案件に参加できる
全省庁統一資格は、入札に参加する地域を自由に選ぶことができますが、その際に、全ての地域を選択すれば、全国どこの案件にも参加することが可能になります。事業所が1カ所しかなくても、全国の案件に参加できる点が大きな特徴になります。
▼以下が選択できる参加地域。全地域を選択すれば、全国の案件に参加可能になる。
競争参加地域 | 都道府県 |
---|---|
北海道 | 北海道 |
東北 | 青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県 |
関東・甲信越 | 茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、山梨県、長野 |
東北・北陸 | 富山県、石川県、福井県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県 |
近畿 | 滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県 |
中国 | 鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県 |
四国 | 徳島県、香川県、愛媛県、高知県 |
九州・沖縄 | 福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県 |
新設法人でも取得できる
全省庁統一資格は、設立すぐの法人や個人事業主も取得が可能です。例えば、東京都などは、1度は決算を迎えている法人しか、入札参加資格が認められませんので、新設法人でも参加できる点は、全省庁統一資格の大きな特徴といえます。
関連記事:東京都の入札に参加する方法!入札参加資格申請の流れも解説
有効期限は最大で3年間
全省庁統一資格は、3年度ごとに資格が更新される為、最大で3年間資格が有効となります。常に資格を維持する為には、少なくとも3年に1回は更新手続きをする必要があります。なお、資格を取得してから3年間ではなく、資格の有効期間が設定されている為、資格の取得時期によっては、1年未満で資格の更新をしなければいけない場合もあります。
※現在の全省庁統一資格は、令和4・5・6年度の名簿の為、次の更新は令和6年度末から始まる予定です
入札は電子申請で行われる
全省庁統一資格を取得した後の話ですが、各省庁の入札は基本的に電子入札によって行われます。その為、電子証明書を取得し、自社のネット環境で電子入札に参加できる体制を構築する必要があります。
全省庁統一資格で参加可能な入札案件の種類
全省庁統一資格によって参加ができる入札案件には、以下のように様々な種類があります。参加したい営業品目の全省庁統一資格を取得することで、その種類の入札案件に参加することが可能になります。
資格の種類 | 営業品目 |
---|---|
物品の製造 (物品の販売も同様) | ①衣服・その他繊維製品類 ②ゴム・皮革・プラスチック製品類 ③窯業・土石製品類 ④非鉄金属・金属製品類 ⑤フォーム印刷 ⑥その他印刷類 ⑦図書類 ⑧電子出版物類 ⑨紙・紙加工品類 ⑩車両類 ⑪その他輸送・搬送機械器具類 ⑫船舶類 ⑬燃料類 ⑭家具・什器類 ⑮一般・産業用機器類 ⑯電気・通信用機器類 ⑰電子計算機類 ⑱精密機器類 ⑲医療用機器類 ⑳事務用機器類 ㉑その他機器類 ㉒医薬品・医療用品類 ㉓事務用品類 ㉔土木・建設・建築材料 ㉕警察用装備品類 ㉖防衛用装備品類 ㉗その他 |
役務の提供等 | ①広告・宣伝 ②写真・製図 ③調査・研究 ④情報処理 ⑤翻訳・通訳・速記 ⑥ソフトウェア開発 ⑦会場等の借り上げ ⑧賃貸借 ⑨建物管理等各種保守管理 ⑩運送 ⑪車両整備 ⑫船舶整備 ⑬電子出版 ⑭防衛用装備品類の整備 ⑮その他 |
物品の買受け | ①立木竹(ただし、国有林野事業で行う林産物の買受けを除く) ②その他 |
建設関連業務は含まれず、各省庁の参加資格を取得する必要がある
なお、全省庁統一資格では、工事や設計業務などの建設関連業務の入札は対象外となっています。建設関連業務は、業務ごとに高い専門性と技術力が求められる為、各省庁の入札参加資格を取得する必要があります。
全省庁統一資格を取得する流れ
全省庁統一資格の申請手続きから資格取得までの流れをご説明します。
①必要書類の準備
申請に必要な以下の書類を準備します。納税証明書は税務署で、履歴事項証明書は法務局で発行してもらう書類も含まれるため、急ぎの場合は早めに縦鼻を進めるようにしましょう。
・納税証明書(その3の3)
・履歴事項証明書
・財務諸表(貸借対照表・損益計算書)1年分
②申請
必要書類がそろえば、申請を行っていきます。申請はインターネット申請か、郵送・持参での申請のいずれかで行います。
作成した申請書と添付書類を、最寄りの受付窓口に郵送または持参します。受付窓口がわからない場合は「統一資格審査申請・調達情報検索サイト」の「受付・審査窓口検索」から検索可能です。
「統一資格審査申請・調達情報検索サイト(外部ページに飛びます)」から、インターネット申請することも可能です。申請画面に必要情報を入力し、納税証明書などの添付書類は、スキャンしPDFデータとして添付して申請します(添付書類のみ郵送で送ることも可能です)。
③審査
申請が完了すると、申請先の省庁にて申請内容の審査が行われます。申請内容と添付書類の内容との不一致や、添付書類の不備などがチェックされます。審査はおおむね申請後1週間~1ヶ月程度で完了します。
④資格の取得
審査が問題なく完了すれば、資格審査結果通知書が発行され、はれて全省庁統一資格の取得となります。通知書は紙での郵送か、PDFのダウンロード取得かを申請時に選べます。通知書には決定した「等級」なども記載されている為、内容をしっかり確認し、大切に保管するようにします。
全省庁統一資格の申請で注意すべきポイント
それでは全省庁統一資格の申請における注意点をご紹介します。入札で失敗しない為にも、必ず押さえておくようにしましょう。
資格取得時に等級が決定する
全省庁統一資格を取得すると、事業者には業種ごとに「等級」が付与されます。この「等級」とは、事業者の財務状況や実績に応じてA~D(物品の買受はA~C)にランク分けされるもので、この等級によって参加できる案件が決まってきます。
等級の決定方法は、まず、業種に応じて、以下の4~5項目について、決まった計算式によりそれぞれが点数化されます。「物品の製造」だけ、設備の額が点数に含まれます(所有する製造設備の状況を等級判定に考慮する為)。
物品の製造 | 物品の販売/役務の提供/物品の買受 |
---|---|
①年間平均売上高(前2カ年の平均) | ①年間平均売上高(前2カ年の平均) |
②自己資本金額の合計 | ②自己資本額の合計 |
③流動比率 | ③流動比率 |
④営業年数 | ④営業年数 |
⑤設備の額 |
各項目の計算式 ※令和4・5・6年度名簿版
そして、それぞれの項目の合計点数を持って、以下の区分表を基に等級が決まってきます。
上記の計算式に自社の数字を当てはめることで、事前に自社にどの等級が付くかを確認することが可能です。希望する案件が具体的にある場合は、自社にどの等級が付与されるかは非常に重要な問題なので、しっかりと事前に確認を行うようにしましょう。
等級は更新が可能
等級は、申請時の直近の決算(財務諸表)の数字を基に付与されます。資格の有効期限は最大で3年ですので、資格を取得してから、業績があがり、決算の数字が良くなった場合、等級をあげる為の申請を行う事が可能です(新しい決算書(財務諸表)ができたタイミングで更新申請を行うことで可能になります)。
等級の変更は義務ではなく、事業者が任意に行うことができる為、反対に業績が下がり、等級が下がってしまう場合は、更新申請をしなければ、資格取得時の等級を維持することが可能です。
全省庁統一資格で参加できる入札案件の調べ方
全省庁統一資格を取得した後に、参加可能な入札案件の調べ方をご紹介します。入札案件の調査は、入札で成果を収める為には重要な作業になります。参加資格の申請を行う前に、自社が参加できそうな案件がどの程度発注されているのかを必ず調査するようにしましょう。※発注省庁、時期、金額、業種なども確認するとなお良い
各省庁の発注案件は、「調達ポータル(外部サイトに飛びます)」というインターネットサイトで見ることができます。Googleなどの検索エンジンで、調達ポータルと検索しサイトにアクセスします。
トップページの「調達情報検索」のボタンを押し、検索ページに移動します。
検索画面に移りますので、検索条件を任意のものに設定し、検索ボタンを押します。条件を何も設定しなければ、現在公開中の案件が全て表示されます。
検索結果一覧から、公示文が確認できますので、そこで案件の詳細を確認することができます。
全省庁統一資格を取得したい事業者様
ここまでお付き合い頂きありがとうございました。「全省庁統一資格を取りたいけど、なんだか難しそう…」「申請作業をする時間がない…」「一日でも早く申請がしたい…」という事業者様は、ぜひ一度当事務所にご相談ください。長﨑行政書士法人は、入札参加資格申請の専門事務所として、これまで多くの事業者様の全省庁統一資格申請を代行してきた実績があります。
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